教育実習回顧録
耳朶缶コーヒー大魔王
私は、金沢大学学校教育学類社会科専修の四回生である。今年の夏、市内の公立学校で教育実習を行った。実習とは確かに辛いものであるが、得るものも大きい。終わった今でも思い出すことが多い。そこで、実習中に感じたことを書きとめることにした。一年生の諸君、これを読んで、教員という職を是非とも検討していただきたい所存である。
今回の小学校での実習は、わずか二週間。昨年の中学校での一か月間に比べれば、どうということはない。しかし、実習初日にして、拙僧(せっそう)*1は重要かつ最大の局面に出くわした。
実習初日、配属されたクラスの子ども達と拙僧の仲を深めるために、質問タイムの時間があった。「好きな食べ物はなんですか」、「出身はどこですか」、「虫は好きですか」、「休みの日は何をして過ごしていますか」、「好きな音楽は何ですか」―なるほど。子どもが純粋とはこういうことなのか。こんなことが気になるのか、長らく忘れていた。なんだ。どうということはない―自分なりにユーモアを交え、子ども達を笑わせながら卒なくこなした。しかし、神の悪戯なのか、奴は忽然と姿を現した。窓際の女の子が立ち、拙僧にこう聞いたのだ。
-----「好きなアニメは何ですか」と。
子どもは非常に目ランランで拙僧の答えを待った。しかしながら、拙僧の刻は止まった。なぜなら、拙僧の好きなアニメがよりにもよって『私に天使が舞い降りた!』*2通称『わたてん』だったのだ。幼女たちがただひたすら尊く、荒んだ心をpurgeしてくれるあの(、、)アニメだ。
焦った。
違うアニメを言わなければと考えれば考えるほど、みゃー姉が、花が、ひなたが、乃愛が、花音が、小依が脳内で喋り、拙僧をオタクの状態へといざなうのだ。時間にするとわずか三秒。しかし、私はオタクが出ないように、長時間反骨の精神でいたように思う。何度、オタクモードになろうとしたことか。みゃー姉と叫びたくなる衝動を何回押さえたことか。しかし、拙僧は戦争に勝ったのだ。
-----「私が好きなアニメは、ガンダムです。」と答えた。
普段、拙僧の一人称は「僕」なのだが、「私」と答えたのは、わたてんの呪いである。だが、戦争に勝った瞬間であるのだ。勝利を納め、盃を交わしたのだ。
ここで言いたいことは、教員である以前にオタクであると隠すのが非常に大変であるということだ。拙僧の場合、わたてんだったからまずかった。小学校五年生のかわいいかわいい天使がひたすら癒してくれるアニメが好きと言っては、学校でどのような末路を迎えたのか。今思うと想像するだけで末恐ろしい。
これを読んでいる一年生を含む教員を目指しているオタクたち。学校とは非常におそろしい空間である。オタクという人種がどれほどいるのか。子どもだけでなく同じ教員の中に、どれだけのオタクがいるのか。少ないであろうなあ。そこは、肝に銘じてほしい。そこを乗り切れば、かわいい子ども達との時間があるはずだ。
最後に、わたてんを知らないのなら是非とも見てほしい。人生が変わる。少なくとも、拙僧はそうである。二期が来ると拙僧は強く願っている。君たちも願うのだ。わたてんは世界を平和にするであろう。
ジーーーーーーーーーク……………わたてん!
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